ウイルス感染症予防に対する精油の可能性

COVID-19感染症

21世紀になりコロナウイルスは3度のアウトブレイクを起こした。2002年のSARS、2012年のMERS、そして今回の2019年COVID-19と、約10年未満の周期で起きている。2020年3月11日にはWHOがCOVID-19の高い感染力は他に類をみないコロナウイルスであるとし、パンデミックを宣言したが現在までその有効な治療法は確立していない。そこでCOVID-19感染症に対して抗ウイルス作用を示す精油の可能性について述べる。

まずSARSコロナウイルスに対する抗ウイルス作用は「ベイローレル精油」で認められている(Loizzo et al. 2008a)。また、インフルエンザウイルスを90%以上の不活性化させる作用については「ラベンサラ精油」、「ティーテゥリー精油」、「ユーカリラジアタ精油」で明らかにされている(中平ら, 2009)。これらの精油の抗ウイルス作用はウイルスのもつエンベロープに由来すると考えられている。このことは電子顕微鏡において、「オレガノ精油」、「ショウガ精油」が単純ヘルペスウイルス(HSV-1)のエンベロープを障害していることでも確認されている(Siddiqui et al. 1996, Schnitzer et al. 2007)。またアルコールなどの医薬品によって不活性化されるウイルスもエンベロープをもつことが知られている。したがって、ウイルスのエンベロープに医薬品や精油の脂溶性成分が吸着することでエンベロープの流動性が変化し、宿主への侵入が不可能になり抗ウイルス作用が現われると考えられる。

以上の各ウイルスに対する基礎的研究から、精油の抗ウイルス作用はアルコール消毒のように感染の拡大を防ぐ予防的な用法が有用と考えられる。具体的には精油をアルコールで希釈したスプレーを部屋に噴霧する簡易的予防法を提案したい。この方法では精油の高い揮発性を生かし、空中を浮遊するウイルスを気体状態の精油の分子で直接不活性化することが期待できる。精油によってCOVID-19感染症予防に協力できることを願う。

Loizzo MR, Saab AM, Tundis R et al. (2008a): Phytochemical analysis and in vitro antiviral activities of the essential oils of seven Lebanon species. Chem Biodivers,5 : 461-470.
中平比沙子, 小尾信子, 宮原達郎ら(2009): 植物精油の直接接触および芳香暴露の抗インフルエンザウイルス作用に関する研究, アロマテラピー学雑誌, 9 : 38-46.
Siddiqui YM, Ettayebi M, Haddad AM et al. (1996): Effect of essential oils on the enveloped viruses: antiviral activity of oregano and clove oils on herpes simplex virus type 1 and Newcastle disease virus. Med Sci Res, 24: 185-186.
Schnitzler P, Koch C, Reichling J (2007): Susceptibility of drug-resistant clinical Herpes Simplex virus type 1 strains to essential oils of ginger, thyme, hyssop, and sandalwood. Antimicrob Agents Chemother, 51 : 1859-1862.